堂野夢酔 水墨の世界

2004年2月7日〜2月11日、七福神の布袋尊の水墨画を書き続けている画家、堂野夢酔さんが来館し、当館3階・ギャラリーにて特別展示会を行いました。堂野さんの作品には「いのちほのぼの」をテーマにした句が掲げられていて、その内容も書体も、大変味のある作品になっています。

〜 プロフィール 〜
1944    兵庫県生まれ
1963    兵庫県立龍野高等学校卒業
1967    大阪工業大学卒業・グローリー工業に入社
1987    過労から右目失明・療養中に少年時代から憧れていた宮本武蔵の水墨画を真似て独学
1990    大阪・花の万博の仕事で教育評論家 阿部進氏と親交
1992    事業中止に自失放浪。阿部氏の応援で水墨再開
1994    全国のデパートや公共施設などで個展をはじめる
1996    退職し水墨画専心
1997    ギャラリー『夢酔庵』竣工,
1998    阿部氏と「カバと夢酔の二人旅」を始め、学校や施設を訪問
2000    『夢酔庵』第2会場整備・ゲーテ生誕250年祭の文化使節団で訪独
2001    京都高台寺にて特別展開催
2002    全国での夢酔展、70回をこえる

堂野夢酔 水墨画展の様子

いかがでしたか。すでに、当館の客室の何部屋かには作品を飾らせていただいております。堂野夢酔さんの詳しい情報を知りたい方は下記のURLをクリックし、Gallery夢酔庵公式ホームページをご覧下さいませ。

Gallery夢酔庵 「堂野夢酔・水墨の世界」
〒679-4321 兵庫県揖保郡新宮町段之上374番地
TEL 0791-75-0407  FAX 0791-75-4637
URL http://www.musui.com/
E-mail don@musui.com


以下、堂野さんよりいただきましたコメントです。(2004年4月30日更新)

旅のつれづれ、万座は仙境なり

―旅の水墨画家・堂野夢酔―

もう何度目の万座だろう…旅に明け暮れる私達この山深い硫黄漂う秘境、嬬恋村を我が家のように訪れるようになった今
人生行路の不思議としか思えぬ縁の糸に万感一去一来である

30年のサラリーマン生活から一変し妻と水墨展の全国行脚を始めて幾星霜
作品を車に載せ各地のデパートを巡るたび
渡り鳥ツガイに行きずりの宿は既に生活の一部となっている

師なく、組織なく、権威ある展覧会出品もせず、束縛ない自由な創作が身上の旅生活
一期一会の来場者に総てを委ね、売れた作品で生活を切り盛り
ボロは着ても心は錦…と思っているが乞食画家に人の情けは嬉しいもの

殊のほか旅中は待ったなしの連続で予約泊など遠い昔の話
どのような所であれ今宵の露をしのぎ温かな粥にありつけば合掌あるのみ
この万座を訪れたのもそんな一コマの中だった

流れ旅に当たり外れは付きものだから文句はないが
いくら安くても二度と行きたくない所やいっぱい誰かに紹介したい所など
様々な経験を重ねてきた…つもり…

そんな一宿一飯、人情芝居の中で始まった信じられないような出来事を
自由人の立場で語らずして何としよう
万座の湯とこれを守る人々の一生懸命は本物で、本当を探す私に心地良い

聞くところ万座の秘湯は有史以前から体に効く湯として知られていたようで
江戸時代には貧しい農民が厳しい労働で痛んだ体を癒すため
この深い山奥まで歩いて通い広く知られていったとか…

昭和30年代まで車道整備もされなかった1800メートルの高地
今なお冬季は軽井沢側以外の道は閉鎖される万座まで歩いて通う庶民が本物の湯を証明す
その湯元こそ現存「日進館」で硫黄煙と共に熱線が噴出

「日進館」は変遷を経て明治以後、黒岩氏が温泉を守り続け
現在も6代目オーナー黒岩堅一氏を中心に「日進館・万座温泉ホテル」は
最高の湯治場として多くの人々を魅了し続ける

山頭火は昭和11年5月25日、旅中に日進館に宿泊したと日記に記す
白根山を越え万座の湯に体を癒す様を想像すると
残雪を食い湯煙と硫黄煙の中をさすらう詩人は余りにも似合いすぎる

現在ここは国立公園の真っ只中…人為的な温泉街開発など許されず
飲み屋街など何処にもなく…あるは大自然そのもの
厳しく、美しく、温かく、あるがまゝの大切さを教え続けている

そしてこの自然環境に感動し集ったスタッフが面白く
食事に、散歩に、毎夜のショータイムに…心からの持て成しを演出してくれる…
安易で、人為的に作られた娯楽にない血の通う本物が匂っているのだ

驚いたことに連日ショーの先頭にオーナー自らが立ち歌い、語りかけ
サキソフォンの甘い音を奏でる市村総支配人…
とつとつと司会を務める津島さん…みんな手作りで一生懸命の人ばかり

行きずりの客だった私達に「何をしている人ですか…?」と市村総支配人…
それから始まった交流で水墨画展を開催するようになり
各部屋を水墨画で飾る要請まで受けそれが続いている…

水墨画は和紙と筆と墨…それを心で一気につなぐ一回きりの真剣勝負
シンプルの一語に尽きる素朴な描写法は人生と重なり
一つの生き様を画題に描き続ける私

人は誰も幸せを願うが何が幸せで何を不幸と思うのだろう
組織のトップに立ち栄誉栄華を極めることは他に比べ幸せの一つの形には違いない
しかし比較は更に上を目指し権謀術策は留まることなく続く

多くの人が長い歴史の中で様々な生き方を試みた記録を見ると
中国で「仙人」と例えられる生き方は架空話のようでもあるが心の持ち方を諭している
フッと外を見れば自然は有りのまゝに存在し誰もが仙人になれるのだ

人間社会に軸足をおかず自然界に軸足を置くと
心はおのずと伸びやかになりこの地球に生かされている毎日が大切で
野に咲く草花にさえ感謝したくなるものだ

個展から個展、各地を旅行く私達に自然は多くを教え楽しませ畏敬の念を抱かせる
そんな中でも万座は特筆すべき日本の仙境…
我、万座と出会い万座に抱かれ万座に浸かり万座の人と談笑…

「 天上天下 唯我独尊 」
(この大宇宙に我と言う命はただ一つ…だから尊い)
お釈迦様の言われた言葉を深く深く噛み締め…我、本日は雲上界万座仙人なり

来たれ諸人…万座は我が最高の仙境ギャラリー…万座で会おう
嬬恋…何たるロマンチックな地名
これを最高の幸せと言わずに何としよう

唯ただ…合掌

平成15年2月10日
万座温泉ホテル3階ギャラリーにて

堂野夢酔さんご夫妻と市村夫妻


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