天国に一番近いスパ! で究極の脱力を

JAYWALK ドラマー 田切純一

今日は私の相棒(といってもうちのグループでBassを担当している中内という男だが…)と万座温泉に来たのだ。
 仕事ではしょっちゅう色々な地方へ行ってはいるものの、プライベートで二人で出かけるなんて20年リズムセクションを組んでいるのに初めての事なのだ!

東京から小一時間走ると、四月半ばの関越自動車道から見える景色は沢山の緑色がコラージュされて、まるで巨大な水彩画の中に潜り込んだようで、「おー!なんと奇麗な!いろんな緑色がー!…ほらほら見て見て」と開放感丸出しで助手席ではしゃぐ私を「もう大人なのですからもう少し静かに観賞出来ないものですかね」と中内は諭しつつ、車は雄大な浅間山を左に、軽井沢を抜け万座に向かってぐいぐいと登って行くのである。

気の早い人は半袖で歩いている四月の半ばではあるが、車のドアを開けるとヒンヤリとした空気に顔をなぶられ、「ずいぶん高い所迄来てしまったんだな」と思い見上げると目の前に雄大なゲレンデがそびえている。そこに寄り添うように佇む此処は、海抜1800m、星に一番近いスパなのだ!天国に一番近いスパなのだ!…なんてロマンチックなスパなのだろう!それだけで私の頭はワナワナしてしまうのだ。

さあ、荷物を置いて天国へ近づくのだ!」とチェックインして本館の212号室に案内されたのだが、ドアを開けた瞬間もう一度私の頭はワナワナしてしまった。ふつう襖を開けると畳の部屋で、真ん中には座椅子に挟まれた温泉饅頭と羊羹とお茶が乗っているテーブルが在って…と想像していた私の目の前に現れたのは、柔らかい間接照明とスッキリとセンス良くまとめられたデザイナーズルームだったのだ。どうもこの部屋の居心地がそーとー素晴らしいのだ!

    


余計な装飾は一切無いのだが、「何なのだろう?この居心地の良さは…?」とすっかり温泉に入るのさえも忘れてベッドに身体を投げ出し、居心地の良い空間に漂いつつ、暫し時の経つのを忘れさせてくれる快感に身を任せてみたのだ。



既にかなり脱力した我々は早速、ペットボトルに何本なんじゃろー?トーキョードームに何杯分なんじゃろー?などと出来ない計算をしつつ…一日に540万リットル湧き出るという温泉にタオル片手に向かって行ったのだ。



「おー!おー!色んな種類のお湯が在るではないか!凄いな!真っ白なゲレンデを眺めながらの露天もいいぞ!初夏はゲレンデが緑色になって、これはまた違った趣が在るのだろーな?なあ中内?…」と話しかけるも彼は既に柔らかな湯の中に既に夢見心地で漂っていて「中内?一日に三度ぐらいが目安ですって書いてあるぞ?」と言っても「だいじょーぶ!だいじょーぶ!ボクはだいじょうぶな身体なんです」とまるで気にしていないこの相棒の神経、繊細なのか大胆なのか今だに分からない…。

    


湯を出て熊笹のハーブティーで失われた水分を補給し部屋に戻ると、もう既に夕飯の時間なのだ。さあビールなのだ!ウグウグ…プハー!とするのだ!!此処に来る道すがら小腹が減ったので蕎麦を手繰って来たのだが、温泉に入ると非常に腹が減るのだ。


    


























身体に気を使っているのが明らかに分かるこの「豆、胡麻、野菜、わかめ、魚、しいたけ、芋」をテーマにした食事を前に「新陳代謝が活発になるから腹が減るのだろーか?」と聞いても、相方は「腹が減る事に理屈は要らないのだ!」と意に介さず、口の周りは既にビールの泡にまみれている。おいしい食事、おいしい空気、極楽のお湯…これ以上の贅沢は味わえないという印象の至福の宿なのである。


舌鼓をうっていると女将がわざわざ話かけて来てくださった。もっとも我々が特別だからってことでなく、一人一人話しかけている細やかな配慮がうかがえる。こちらでは毎晩いろんなアーティストによる演目が行われていて、同業である我々も興味深かったのだが、そんな音楽談義に花が咲いたのだ。音楽に理解が深いのはタイヘンうれしく有り難いことである。


    


ワインや日本酒を頂きながら本格的に幸せな気分になった我々は、ロビーで行われているミニコンサートなど見ながら酔いを醒まし、またまた離れにある星に一番近い露天風呂を目指した。


ヒンヤリとした空気が頬に心地よく、手を伸ばせばつかみ取れそうな満天の星に見守られながら湯に浸ると、なんと心の奥底の緊張がジワジワと緩んで来て、それが身体の末端迄ジワジワと伝わって来るのが分かるのだ。いやはや、なんとも幸せな気分で脱力してしまうのだ。すっかりリラックスした私達は湯に浸かりながら、どちらからとも無く普段話した事が無いような事を時間を忘れて話し始めた。ひょっとしたら…此処は、ほんの些細な心の壁をも拭い去ってしまう効果もあるのではないか?、と思えるほどリラックス出来る場所なのかもしれない…。

    

















さあ!湯に入れば喉が渇くのである。
部屋に戻って冷えたビールで喉を潤すのだ!

願わくは中内が何かの間違いで絶世の美女に変身してしまう事を祈りつつ、湯に浸かっているときと同じぐらい脱力出来るあの部屋に戻って、冷えたビールで身体を潤すのだ!もしかしたら、これは究極の脱力なのかもしれないのだ!

JAYWALK ドラマー 田切純一


※当館は、2008年12月1日より夕食がバイキング形式に変わりました。


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